farmar's talk NEO

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キュウリ出荷組合研修旅行(その二)

ちょっと、時間をさかのぼる・・。

研修旅行の出発前、今回のキュウリの組合の研修旅行に出かけるにあたって、一つ問題があった。それは四番目の男の子、夢男家の長男だ。末っ子ということもあって、彼は上のお姉ちゃんたちと比べて、ちょっと甘ったれ。まあ、彼の甘ったればかりを責められるわけはない。最後の子だからとちょっと甘い、私たち親も問題なのは間違いなのだが・・。

「お母さんがいなくても大丈夫?一人で寝られる?」

「全然、大丈夫だよ。お姉ちゃんと寝るから。行ってきていいよ」

と、逆に滅多にない親のいない一晩を楽しみにしているようだ・・。これを聞いて嫁さんが少しがっかりしたのは言うまでもない(笑)



さて、研修旅行のバスの中に戻りましょう・・。


キュウリを出荷している大手小売店の青果部門本社に着いた、私たち、キュウリ生産組合ご一行様・・。バスに乗った時から飲み始めたのだが、さすがに取引先の会社に行くわけだから、それを気にしつつセーブ。その甲斐あって、到着した時には、みんなシャンとしてる。

担当の若い社員に案内されて会議室に入っていく一行。先ほどのバスの中での勢いはどこへやら・・。なんだか、皆、大人しい・・(笑)。女性社員にお茶を出してもらって、それを飲みながら待っていると「エライひと」の登場。なんと、ナンバーワンとツーの方・・。皆、さらに大人しく・・(笑)

いつも取引してる商品、つまり自分たちの出荷したキュウリの流通経路や売上等について説明があったあと、出荷量の増量やこれからの出荷における改善点、私たち生産者への要望、そして質問など。その中で、とても印象に残るキーワードがあった。

「キュウリはトマトに次いで売上高二位の野菜です」

そうなのです。トマトはテレビ番組等でよく取り上げられるし、トマト農家は比較的多いし、そのトマトのキャラクターからもそれは容易に想像できた。でも、この地味なキュウリも上位だとは・・。いや、何十年も前からキュウリが一位だったことは知ってた。十数年前にトマトに追い抜かれたことも知ってた。でも、まさか、今だに二位の位置を保っていたとは・・。やるじゃないか、キュウリ! 

「エライひと」からこの言葉が聞けただけで、自信とやる気が沸々と体の中にわき上がったのは、私だけだったのだろうか・・。誰もが緊張から安堵、そして充実感いっぱいとなった様子のキュウリご一行様・・。


会社をあとにして、次の目的地の茨城県にある種苗会社研究農場に向かう。充実しすぎた挨拶と説明で予定の時間をかなりオーバー。しかし、遅れを取り戻すべく、「キュウリ」バスは高速道路を転がっていく・・。


・・なんだか、懐かしい景色。途中、牛久大仏の脇を通る。ああ、二十才の頃、成田に住んでいた時の記憶が蘇る。千葉と茨城は隣どうし。友達とスキーに行く時、よく通った辺りだ。スキーというと、当時、流行った曲はGO-BANG'S「あいにきて I・NEED・YOU!」とか、広瀬香美「ロマンスの神様」とか・・。

突然、松任谷由実のアルバム「Delight Slight Light KISS」(http://yuming.co.jp/discography/album/original20/)の一曲、「Home Townへようこそ」が頭の中を駆け巡る。このアルバムは「リフレインが叫んでる」が有名なのだが、一番好きなのは、彼の田舎へお嫁に行くヒロインの気持ちを歌った「Home〜」だ。

なだらかな丘 うしろへ流れて

白いプロペラ ゆっくり泊まれば

そこははじめてたずねる あなたのHome Town


フェンスにのぼって 手を振るあなたに

駆け出すのよ 帽子おさえて

(『Home Townへようこそ』松任谷由実 詞)


うるうる・・。涙で前が見えない・・(笑)


田舎を離れて、他所で仕事に就いた当時の自分にとって、目下の問題は、農業を営んでいる山形の実家と自分の将来の結婚だった。この「Home Townへようこそ」は、そんな問題の最良の結末と思っていた、あの頃。今、隣の席にいるのが、この歌で「駆けだした彼女」なのか・・。今は四人の子の母となった「帽子おさえている彼女」なのか。


そんな昔のことを思い出しつつ、日が暮れつつある遠くの田んぼを眺めていたら、バスは研究農場に近づいた。種苗会社の農場に着いた頃には、もうだいぶ日は落ちた。遙か彼方に、かすかに小さく富士山が見えた。


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研究農場では、偶然にもキュウリの育種担当者による説明だった。

「いいことは言わなくてもいいです。なにか、我が社のキュウリについて問題点とか、気になることだけ聞かせて下さい」

種苗会社の営業とか、担当者は、自社の野菜などの品種について、良い点だけをアピールして、欠点や他社の優良品種のことをあまり言わない。でも、どうもこの担当者はこれまでの人たちと違うようだ。安心感というか、信頼感・・。

ここ数年、迷いもあり、疑問にも思っていたことを質問をしてみた。今使っている他社の無加温ハウス用キュウリ品種名をあえてあげて、同様の品種はあるのか。この会社のカボチャ台木品種は他社と比較してもとてもいいと思っている(我が家の台木はすべてこれを使っている)が、それ以上にお勧めのものはあるのか。答えは前者は「なし」。後者は「ある」。他社の品種を褒めつつ、自社の製品の長所と欠点を言う。そんな担当者の姿勢にとても好感を持った。なんだか「あなたについていきます」と言いたくなった(笑)


遠くの地平線は鮮やかな夕焼け。山形の盆地の夕焼けとは全く異なる景色。長いバス移動で疲れてはいたけれども、精神的には満たされ、逆にここでも元気が出てきた。そんなことで、もうすっかり暗くなった研究農場をあとにした。


(これで終わろうと思ったのに終わらなかった・・)

(つづく)