farmar's talk NEO

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「農業」の気持ちを大地康雄はわかってた・・

テレビで放映してた「恋するトマト」(2005年公開)という日本映画を観ました。全く予備知識なしの観賞でしたが、これが思いがけない傑作だったのです。主演は個性派俳優の大地康雄

茨城県霞ヶ浦に住む農家の長男、野田正男(大地康雄)。五十代になっても結婚できないまま、高齢の両親と家業の農業を営んでいる。農家仲間も結婚してないのが多く、女性とのお見合いパーティなどに参加するもなかなかうまくいかない。農家をやめる仲間も出始め、正男も知り合ったフィリピン・パブの女性と付合い、農家をやめ、その女性との結婚を決意。

ところが、その結婚は詐欺で、フィリピンの家族に持参したお金をだまし取られてしまう。失意の中でスラムの中に埋もれる正男。そんな中、マニラでフィリピン女性を日本に送る稼業をしている社長に拾われ、女の子をスカウトする仕事に就く。仕事を疑問に思いつつも流される正男。

そんな時、農村出身のクリスティナと出会う。父親が病気で入院の費用を稼ぐため、レストランで働いている彼女。彼女の実家の稲刈風景はも日本と変わらなかった・・。正男の望郷の念・・。そして、これからの彼女との関係は・・。

正直、この映画を観るのは不安でした。大地康雄が農家の長男を演じる・・。失礼ですけど、どうせ、グダグダなドラマなのでしょう。展開は映画を観る前からわかってます。主人公は傷つくんです、絶対に・・。悩むんです、農業をすることを・・。そして、そして農業は先が見えないはずなんです。

観始めてすぐ、予想は当ったと思いました。やっぱり、正男は傷ついたのです。高齢の両親を相手に、やり場のない悩みを吐き出したのです。ああ、見るんじゃなかったと思いました。私は「農業」も「長男」もよくわかります。ついでに「ふられる」ことも・・(笑)。だからこそ、とてもこんな映画は目を開けて観てられません。

ところがです。正男が農村に足を踏み入れてからがこの映画が変わるのです。何だか、大地康雄と農村生活が素敵に見えてきたのです。全部書きたいところですが、ネタバレになりたくないのでここでやめます。ありがちなストーリーはともかく、この映画が農家の目からみても観るに値する映画なのは、農業の描き方がリアリティがあって、とても真摯なのです。

まず、配役がすばらしい。主役の大地康雄は文句なし。友人とその妻に藤岡弘&あき竹城、離農する友人は村田雄浩、父親、織本順吉。母親役のいまむらいづみもとてもいいです。見合いパーティーで知り合った女性は富田靖子。お見合いパーティーに来たメンバーには阿知波悟美もいます。これ以上の自然な農村キャストはいないでしょう(失礼)。普通、こういう農村映画にはどうしても無理が出るのです。だって、主役にそれなりにカッコイイ役者を使おうとするから。どうみても農業なんかしたこともなさそうな人を・・。その点、大地康雄は本当に農村にいそうです(笑)。

役者の雰囲気だけじゃありません。大地康雄演じる正男の「農作業演技」の技術。フィリピンの田んぼで稲刈を手刈りでするのですが、そのわらの束ね方はまさに田んぼのプロです。畑での手慣れた姿は日本の農家が外国で自分の田畑を思い出して作業する、という設定で全く違和感のない自然な動作。霞ヶ浦の風景とフィリピンの農村の風景の中で、自然な農業の描き方には感動さえも覚えます。

フィリピンの美しい農村風景の中で、ゆっくりと映画は終盤を迎えます。正男とクリスティナの関係はどうなるのか。涙がとまりませんでした・・。

この映画は、たとえラストがどう終わったとしても心に残る映画だと思います。農業とそれに従事する家族がどう生きてきたか、どう生きるべきかを大地康雄さんが自分なりに解釈したのがこの映画なのでしょう。農業を描いた映画はいくつかありますが、この映画は間違いなくナンバーワンでしょう。それぐらい農業の夢の部分を描いていた作品でした。

彼は「農業」の何が大切かを本当によくわかっていたのです。

恋するトマト 大地康雄さんの涙 - マムーの撮影探検日記

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