farmar's talk NEO

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教科書の未来

Appleから「iBooks 2」「iBooks Author」「iTunes U」が発表されました。なかでも電子書籍制作アプリ「iBooks Author」がすばらしいと思います。

初めてMacを買ったのは1993年「Color Classic」。毎日コミュニケーションズから出ていた『Macのワンダーランド』(白鳥敬著)という本に影響されたからでした。それに解説されていたMacは、その頃主流のMS-DOSとは比較にならない、まさに「未来」だと感じました。でも実際に手にしていじってみるとその「未来」は「夢」なのだとも思いました。HyperCardはすばらしいソフトでしたがモノクロだし、QuickTimeも本当の初期で、動画もちっちゃなウインドウでしか再生されません。動画も画像も音声もすべて扱える「ワープロソフト」が市販ソフトの花形だった時代*1・・。ワープロで動画が扱えたとして、それでどうなる、という感じでもありました。今回発表された「iBooks Author」はそんな昔に夢見た「未来」を現実のものにしてくれそうな気がしました。

Macを買ってやりたかったのは「動く農業教科書」を自分で作ることでした。農業は複雑です。作物や家畜が育つ、とひと言で書くと簡単ですが、地球の営みとは切っても切れない一つの部品のようなものだからです。

植物が地中の水や肥料分を吸い上げて小さな種から大きくなる。日照や風などの天気も大きく関係する。そもそも、それらが植えられてた土壌自体の鉱物としての土がどのようなものか、ということもある。土には鉱物だけじゃなくて、いろんな微生物が数え切れないほどいる。育っている間に害虫や病原菌が植物の中に入ろうとする。それらの葉の上での攻防戦。害虫や病原菌の生活史はどのようなものか。作物のルーツはどこか。なぜ、人はそれを育てて食べることを思い立ったのか。そんなふうに書いていっても書いていっても、農学という分野の広がりにはきりがありません。

そんな農学を学んでいる時に必要不可欠なのは教科書の図版です。農学を学んでいるといっても、農業を見たことがなければ文字だけでは全く理解が深まりません。だから、農場実習が実験があるのです。しかし、農業は多様です。すべての農業を実習で知ることはできません。教科書の中から知らない農業を読み取るしかないのです。たとえ、モノクロの写真や線画であってもそれは貴重な情報です。それが精細なカラー図版や動画で理解しやすかったら、なおのこと学びやすいでしょう。

今回の「iBooks Author」はこれまで思っていたそんな農業を学ぶ上で理解を深めるための方法が大きく変わると思いました。実際、サンプルの動画で紹介されていたのは生物の教科書でしたし・・。

農業ばかりではなく、教育や出版のあり方を変えてしまうかもしれないAppleの技術・・。でもね、現場の農業があっての農学であるように、その新技術の教科書に載る図版は、先人の研究をもとにした「ひと」が作る泥臭いものであるはず。そうなんです、紙の教科書を作るのと変わらないと思います。紙の教科書であろうが、Appleの小綺麗な機械の教科書であろうが、むしろ、学ぶ目的はここで大きくは変わってはいけない。ただの方法が違うだけですから・・。

農業技術もそうですが便利さは幸せなことです。でも、根本的なことは忘れてはならない。今回の発表で喜び半分、肝に銘じること半分・・。